夜と霧:生きる意味なんてやってこない
歴史上、人類が作り出した最も陰惨な環境であるナチスの強制収容所では、ユダヤ人の死亡率は90%以上という、死が当たり前の状態です。
その状態の中で、収容された人間の思考や感覚は鈍麻し、失われていき、多くの人が生きることを諦めていきます。
そのような極限状態で、なぜ生き延びようする意思を持てるのか、なぜ生きることを諦めないのか、を本書は教えてくれます。
(著者はユダヤ人として、ただの一労働者として収容されています。収容される前は精神科医。)
それは、本書で紹介されるニーチェの格言に集約されます。
「なぜ生きるのかを知っている者は、どのように生きることにも耐える。」
ここでの「なぜ生きるのか」の答えは、外から自動的に与えられる一般的ものではなく、 時々刻々の具体的な問いに「行動」によって答えることだと著者は言います。
簡単に言えば
「生きる意味って何だろう」なんて考えても生きる意味はやってこなくて、
「私がしないといけない仕事が待っている」とか「子どもを迎えに行ってごはんを食べさせないと」とかの、具体的な義務に答えていくことが「生きる」ということになります。
肉体も精神も極限の状態で、かつ死ぬことが楽で当たり前の世界では、誰かに必要とされていることが生きる意思の一助になります。
このような「他人による承認」を必要とする人間の脳のプログラムは、人間が社会的動物であることを如実に示しています。
生きる意味なんて悩んだってやってきません。
結果的に生きた行為しか残らないということです。
- 作者: ヴィクトール・E・フランクル,池田香代子
- 出版社/メーカー: みすず書房
- 発売日: 2002/11/06
- メディア: 単行本
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