都市は人類最高の発明である:SNSは対面コミュニケーションに及ばない
「田舎と都会にどっちがいいだろう?」
という悩みは個人レベルでよくあります。
「田舎のほうが自然は近いし、人混みはないし、犯罪も少なそうだし」
などの理由で、田舎を好む人もいるでしょう。
「欲しいものはすぐに手に入るし、仕事も就きやすいし、娯楽は多いし」
という理由で、都会を好む人もたくさんいます。
もちろん個人の選択は自由なので、どちらがいいということは一概に言えません。
しかしマクロなレベルにおいては、
都市のほうが優れている
というのが本書の話です。
なぜかというと、現代社会では新しいアイデアに価値が置かれます。
新しく有意義なアイデアにお金が集まります。
アイデアは高密な都市空間で人から人へと移動した、このやりとりがときどき、人間創造性の奇跡を引き起こす。
本書は、都市の歴史をおさらいし、都市がアイデアを生み出す土台になってきた、と指摘しています。
都市は昔から知的な爆発を生み出し、ある賢いアイデアが別のアイデアを生むように仕向けている。フィレンツェ、バーミンガム、マンチェスター...
都市というのは、多様な人同士が近くで働ける環境のことです。
簡単に言えば、いろんな人が雑談しながら働く環境です。
現代社会は、情報技術の発達により、人間同士の距離は近くなってきているように見えます。例えば、スマートフォンでSNSを使えば、すぐにでも友人や同僚と連絡が取れます。
しかし、情報技術がいくら発達したとはいえ、近くにいる同僚に「ちょっといいかな?」と話しかけたり、コーヒーやお酒を飲みながら仕事の雑談のような気軽さはありません。
「この問題、どう処理しようかなー」とか「なんだかこのアイデアは面白そうだなー」のような、いわゆるアイデアレベルの話を、違う部署や会社の人とEメールやSNSで雑談することはあまりありません。
都市の持つ近接性は、コミュニケーションの複雑性の呪縛を減らすことで、文化間の接続を可能にする。複雑性の呪縛とは、伝送される情報の量が増えるにつれて、正しく伝わらないメッセージの可能性が増えるということだ。単純なイエスやノーを伝えるのは簡単だが、天文物理を教えるのはずっと難しい-あるいは経済理論でも。
都市は、答えの出ていない難しい話題について、多様な人間同士の心理的、物理的距離を小さくし、その結果、新しいアイデアを生み出す(雑談できる)環境を提供してくれるのです。
ちなみに「デジタル? or 対面?」のどちらか1つを選べ、ということではなく、これら2つは相互補完的なものということが大事です(情報技術の改善は対面コンタクトの需要を増やします)
- 作者: エドワード・グレイザー,山形浩生
- 出版社/メーカー: エヌティティ出版
- 発売日: 2012/09/24
- メディア: 単行本
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