AI vs. 教科書が読めない子どもたち:AIから新しいものは生まれない
第何回目かのブームがやってきているAI(人工知能)ですが、やっと世の中の論調も、
「AIを使えばなんでもできる。AIは人間の知能を超える。」
の状態から、
「AIっていっても、結局、過去データから予測しているだけじゃん。」
の方向に落ち着いてきている気がします。
(もちろん大量の過去データを使った予測精度がとんでもなく向上してきているのは事実ですが)
これは3DプリンターやIoTのときも同じです。
例えば3Dプリンターの場合、
「誰でもモノづくりができる!どんな形でも作れる!」
と期待されていましたが、
「精度が低いし、積層だから強度が弱いし、作るのに時間かかるし、試作用か特注向けか玩具くらいしかできないな。」
と気づいて少しずつ現実的な使い道に落ち着いていきました。
重要なことは「新しいテクノロジーをよく理解して、どのように使うかを考える」ということです。あくまでテクノロジーは手段です。
(決して「新しいテクノロジーが来たって大して何もできないよ」とテクノロジーを全否定するものではありません)
さて本書でも、現在AIと呼ばれるテクノロジーの「できることできないこと」が、具体的な例とセットで紹介されています。例えば、
・基本的にAIというのは、ただの計算機にすぎない
・計算機なので「意味」の理解はできない(読解力がない)
・人間が作った数学的なフレーム、モデル内でしか計算できない
・人間が作った数学的なフレームやモデルは世界のほんの一部しか表していない
というように。
このような特徴から、単純計算や定型文処理などのルーティンワークは非常に得意です。今後、デジタル化可能なルーティンワークはAIに置き換えられるだろうと予想されます。
では、人間がAIに対して比較優位を確保していくためにはどうしたらいいのか。
それは人間がAIの苦手な部分を担当していけばいいわけです。
AIが原理的に苦手なことは「意味」を理解することです。AIは、決められたフレーム内でひたすら計算をすることができるだけで、フレームを作る意味は理解できません(なのでフレーム自体を作ることはできません)。
もしAIを持参して、数十年前の運送業界にタイムスリップしても、
大口輸送における配送ルートの短縮や荷物の組み合わせによる物流コストの効率化はできますが、例えば宅急便のような新しいビジネスモデルの作成はできません。
AIからはファミコンもiPhoneもUberも生まれません。
このような新しいフレーム(ビジネスモデル)を設定するためには、世の中で既にフレーム化ないしはモデル化されていない「行間(意味)」を読んで言語化、数値化(モデル化)する能力が重要です。
もちろん誰もが新しいビジネスモデルを作れるわけではありませんが、少なくともAIにとって代わられないように、読解力を上げてAIに仕事を奪われないように準備することは重要でしょう。
(残念ながら読解力を上げるための有意な方法は本書では紹介されていませんが。。)
<参考:gartner hype cycle>