「分かりやすい表現」の技術:行政の文書を分かりやすくするには
本書は「分かりやすい表現」の技術を教えてくれる本です。
まず 「分かる」って何? ということですが、
「分かる」とは「情報が脳内で整理されている」ということ。
だそうです。
そして「情報が脳内で整理される」ということは何か、というと、
情報が、脳内の短期的記憶領域である一次記憶※を通過した後、長期的記憶を担当する「二次記憶」に適切に配置されること。
です。
※脳の記憶方法は、下記のように一次記憶と二次記憶の二段構えになっています。
一次記憶(作業記憶):7文字程度しか覚えられない一次的作業域。PCのメモリーと同じですぐ消える。
二次記憶(意味記憶):整理された情報がしまわれる長期的記憶域。PCのHDDやSSDのようなもの。
それでは、情報を伝える際に「スムーズに相手の二次記憶の一区画に情報を格納」
させるためにはどうしたらいいのでしょうか。
教育心理学者オーズベルによれば、認知しなければならない情報を与えられると、人は、すでに自分が持っている認知構造に関連づけて(意味をもたせて)認知します。
言い換えると、「分かる」とは、新しい情報の構造に関して、自分がすでに知っている情報の構造と照らし合わせ、それと一致するものを認識することです。
簡単に言えば、
分かりやすい表現とは、受け手が持っている知識に近い解釈しやすい情報
ということになります(書いてみると当たり前なんですけど)。
例えば、誰かに勉強(例えば英語)を教えようとするとき、TOEIC300点の人に900点レベルの内容を教えても理解されません。
300点の人には、300点の能力×1.1~1.3くらいの少しストレッチした難易度の内容を、優先順位をつけて勉強させることが効率的です。
本書に書かれているルールを抜粋すると、以下のようになります。
(本書ではルールが10x16もあって多かったので、私が勝手に集約しました)
1.受け手がどんな前提知識を持っているかを設定すること
2.はじめに全体地図(概要)を伝えて、その後、現在地(詳細)に移ること
3.表、図を使って情報を整理して、情報の受け手の負担を軽減すること
4,伝えたいことに優先順位をつけて情報を絞ること(情報サイズに注意すること)
ちなみに、行政の文書は分かりにくいとよく言われます。
(行政文書の「型」に慣れると早く読めるようになりますが、それでも解読に時間がかかる。)
行政文章の分かりにくい原因について、これらの4つのルールに照らして考えてみた場合、
一番の原因は、4の情報の「優先順位づけ(次に3の情報整理)」がうまくいっていないからじゃないかと思います。
(特に役所内部向けの事務連絡や資料はわかりにくさMAX)
どうしても、役所の文書は、読み手に誤解を生じさせないように(あとで怒られないように)、色んな説明や言い訳を織り込みがちです。
ひどいときには極小フォントサイズを駆使してまで情報を詰め込むときがあります。
行政の立場上、情報を詰め込むことは仕方がないにしても、
優先順位をつけて一ページ目、一言目に何を載せるのか(第一印象で何を伝えるのか)、
に注意して文書や資料を作ることはできると思います。
(補足説明(詳細や言い訳)は、取扱説明書や約款のように別ページで載せておけばいいのです)
まずは「伝えたい文を、短く太く大きく」から。
※最後に
本書は全4章のうち約半分の章が、著者が不満に感じている「世の中に溢れている分かりにくい表現例」で埋められていますので、すぐにでも分かりやすい表現の技術を学びたい人は、第4章だけを読めばいいです。
「分かりやすい表現」の技術―意図を正しく伝えるための16のルール (ブルーバックス)
- 作者: 藤沢晃治
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1999/03/19
- メディア: 新書
- 購入: 22人 クリック: 374回
- この商品を含むブログ (101件) を見る