或る地方公務員の読書録

行政やテクノロジー、その他実用書について、技術者、自治体職員の視点から感想文を書いています。

アフリカ 苦悩する大陸:社会の仕組みは簡単には変わらない

本書は10年以上前の本ですが、今でも世界的に見ればアフリカの多くの国は、貧困から抜け出せていません。 この原因を一言で言ってしまうと、「政府がまともに機能していない」ということに尽きます。 政府は、基本的にみずから富を生み出すことはありません…

ゼロからトースターを作ってみた結果:世界は分業で成り立っている

本書は、タイトルの通り「ゼロ」から(本書のルールでは原料から)トースターを作った実録です。 なぜトースターが選ばれたかというと、 あると便利、でもなくても平気、それでもやっぱり比較的安くて簡単に手に入って、とりあえず買っておくかって感じで、…

東大読書:効率的に本の情報を知識化するには

どうやったら、読んだ本(実用書)の内容を効率的に知識にすることができるでしょうか。 それは本を能動的に読むことです。 誰もが、なんとなく本を選んで、なんとなく読んだ気になったことがあると思います。 何日もかけて読み終わったけど、「何が書いてた…

新・所得倍増論:日本のシステムは人口増を前提に作られている

日本政府が既に「生産性革命しなければ!」と言っているくらい 日本の生産性は低い と言うのは巷に知れ渡っていますが、改めてランキングを見てみると、 このように(予想以上に)低い位置にいます。 もちろん昔から生産性が低かったのではありません。 今低…

都市は人類最高の発明である:SNSは対面コミュニケーションに及ばない

「田舎と都会にどっちがいいだろう?」 という悩みは個人レベルでよくあります。 「田舎のほうが自然は近いし、人混みはないし、犯罪も少なそうだし」 などの理由で、田舎を好む人もいるでしょう。 「欲しいものはすぐに手に入るし、仕事も就きやすいし、娯…

AI vs. 教科書が読めない子どもたち:AIから新しいものは生まれない

第何回目かのブームがやってきているAI(人工知能)ですが、やっと世の中の論調も、 「AIを使えばなんでもできる。AIは人間の知能を超える。」 の状態から、 「AIっていっても、結局、過去データから予測しているだけじゃん。」 の方向に落ち着いて…

行政ってなんだろう:ここではないどこかの小さな村を想像してみよう

「行政」や「政治」という言葉は、市民全員が関わる割には中身がよくわからないものです。例えば「教育」という言葉なら、誰もが小・中学校に行っているのでなんとなく想像ができます。 小・中学校に行かない場合、どのようなリスクがあるのかも想像できます…

英語学習のメカニズム:ほんの少し難しいインプットを大量に

「第二言語習得研究にもとづく効果的な勉強法」とサブタイトルがつけられていますが、本書は第二言語習得だけに関わらず、一般的かつ効率的な勉強方法を教えてくれます。 第二言語習得の流れを超簡単に書くと、下記のようになります。 「インプット」 → 「中…

「分かりやすい表現」の技術:行政の文書を分かりやすくするには

本書は「分かりやすい表現」の技術を教えてくれる本です。 まず 「分かる」って何? ということですが、 「分かる」とは「情報が脳内で整理されている」ということ。 だそうです。 そして「情報が脳内で整理される」ということは何か、というと、 情報が、脳…

2050年の技術:これからの人類は自らのゲノムを操作する

英Economist誌が「2050年の世界」に続いて編集した、2050年の技術動向を予測している本です。 予測されている技術を並べてみると、、 ・チップはあらゆるものに埋め込まれIoTが進む。 ・誰もがヘッドセットを持ち歩く。ヘッドセットだけでなく、コンタクトレ…

魂でもいいから、そばにいて:人は物語を生きる動物である

東日本大震災では、死者・行方不明者一万八千人余りを出し、一万八千人以上の家族に悲劇をもたらしました。 本書では、東日本大震災の遺族が体験した、震災後の不思議な出来事が集められています。 「愛する人がいない世界は想像を絶する地獄です。」と繁さ…

ムダな仕事が多い職場:中小企業こそ生産性向上の効果が高い

本書は、ムダな仕事が多い日本的な仕事のやり方と、合理的な海外の仕事のやり方を比較、紹介している本です。 本書で指摘する内容は以下の通り。 日本人の仕事のやり方: ・合理的目標が設定されていないためサービスの限界がない(サービス過剰) ・部分最…

夜と霧:生きる意味なんてやってこない

歴史上、人類が作り出した最も陰惨な環境であるナチスの強制収容所では、ユダヤ人の死亡率は90%以上という、死が当たり前の状態です。 その状態の中で、収容された人間の思考や感覚は鈍麻し、失われていき、多くの人が生きることを諦めていきます。 そのよう…

地方創生大全:ゆるキャラなんてやってる場合じゃないよ!

人口減少、高齢化により日本中の街が縮小している中で、小さくても少しずつ生き延びる事業をコツコツ進めてきた著者による「地方創生」の失敗する原因と成功する方法の紹介です。 紹介内容はものすごく当たり前で簡単なことです。 地方創生に大事なことは・…

日本経済入門(野口悠紀夫)

書名のとおり、いくつかの経済指標を用いながら日本の代表的な問題点を挙げている本です。 以下、目次からいくつか抜粋。 ・ 経済活動をどんな指標でとらえるか(GDP) ・製造業の縮小は不可避 ・物価の下落は望ましい(&円安は日本の労働者を貧しくする) …

スタンフォード式最高の睡眠:眠り始めの90分が重要

「生活の質を向上させたい」と思ったら、睡眠の質を上げることが効率的かつ汎用性が高い方法です。当たり前ですけど、人生の約3分の1は寝ているので。 ということで、この本は、 「睡眠の質を上げるにはどうしたらいいか?」 について、世界中の研究に基づ…

「司馬遼太郎」で学ぶ日本史

本書は、司馬遼太郎の主な著作を解説しながら、戦国時代以降の歴史を紹介するという本です。 司馬遼太郎の著作を通して歴史を紹介しているので、単純な歴史紹介ではなく、「司馬遼太郎がどんなふうにそれぞれの歴史を見て、どのように登場人物をそれぞれの小…

歴史に「何を」学ぶのか:歴史は面白い

半藤一利による若者向けの近現代史入門書(+半分自伝)です。 内容については、著者のこれまでの著作の内容を改めて平易に紹介しているだけなので、「昭和史」や「日本のいちばん長い日」を読んだ人には、特に改めて読む価値はありません。 とは言っても、…

財政のしくみがわかる本:行政における仕事の優先順位

どんな職種においてもですが、特に公務員においては、必ずと言っていいほど 「この仕事ってやる意味あんのかな?」 という瞬間に直面します。 (前例踏襲主義の傾向が強いなどの理由による。なぜ強いかはまた別の機会に) そんなときに本書は 「そもそも政府…

The New Odyssey(シリア難民):火事が起きている家には戻れない

2011年チュニジアから始まった「アラブの春」は、ずっと変わらないと思われていたアフリカの独裁体制を有する国々(エジプトとかリビアとか)の体制を壊しました。 独裁体制の中で、体制を転覆させるほどの大規模デモが起きた背景には、当時加速度的に広まっ…

失敗の本質

この本は、大東亜戦争における日本軍の戦い方、負け方を分析し、日本軍、日本人が失敗に至る原因を探る書籍です。 などと、改めて紹介する必要がないほど有名ですが、今回読んでみて、この本は左翼的な「自虐」とはまた違った自虐本だなと思いました。 左翼…

人工知能(ハーバードビジネスレビュー)

続けて人工知能の本です。ハーバードビジネスレビューの人工知能に関する論文をまとめて書籍にしたものです。 人工知能の特徴がよくまとまっているのは、第2章の「人工知能はビジネスをどう変えるか」の部分です。 ー以下、抜粋(一部加工、追記あり)ー 〇…

人工知能は人間を超えるか

巷間、「人工知能」や「AI(Artificial Intelligence)」という単語が、様々な思惑とともに流行しているようです。ワタクシも流行に乗って概要でも理解してみようと手に取ってみました。 まずは、松尾豊氏の「人工知能は人間を超えるか」です。 ちなみに、こ…

沈黙(遠藤周作)

マーティン・スコセッシの「沈黙」のレンタルが始まっているようなので、映画を見る前に再読。 この時代は、多くの人(特に農民)は満足に食べることもできず、病気になっても薬はなく、厳しい年貢の取り立てに追い立てられる、という、生きてること自体が苦…

マックス・ウェーバーを読む & 職業としての政治

今回は、マックス・ウェーバー先生を読んでみました。 マックス・ウェーバー。 名前は有名ですが、文系の世界で偉い人、くらいしか基礎知識はありません。 文系の人は必須で読んでたりするんですかね。 理系におけるラプラス変換みたいな。ちょっと違うか。 …

3/31メモ

文藝春秋1月号 佐々木毅『私は、今の日本社会には「三重の亀裂」が走っていると考えています。 一つは、富裕層と低所得層という「所得の亀裂」、二つ目が東京圏と東京圏以外という「地域間の亀裂」、三つ目は高齢者と若者という「世代間の亀裂」です。』

小谷野敦のカスタマーレビュー

読んではいけないと思いつつ、ブックガイドの類を読んでしまいました(ブックガイドを読むと読みたい本が増えて収集つかなくなるから)。 小谷野敦の文章リズムが私は苦手なのですが、このような短文批評はなぜか読みやすかったです。 <読みたくなった本、…

寡黙なる巨人

脳梗塞になった医者、多田富雄氏の絶望と苦しみ、 そして生の喜びがひしひしと伝わってきます。 脳梗塞になって半身不随の後遺症、と書くと、簡単なのですが、 実際は、声を出す、食事を飲み込む、立つ、歩く、などの当り前に 無意識で動いていた筋肉が動か…

敗北を抱きしめて(上巻)

本書は、戦後の大混乱の中を、いろんな日本人がいろんな生き方をしていた、ということをそれこそ小説、音楽、風俗、いろんな資料を基に教えてくれます。 上巻を通して感じたことは、アメリカの押し付け民主主義を、日本人たちは混乱しながらも明るく受け入れ…

ニッポン景観論

「愛しているなら、怒らねばならない」という白洲正子の言葉通り、怒りながら皮肉をまぜて「美しくない日本の景観」をとにかく挙げ連ねています。 電線、鉄塔、看板、広告、コンクリート土木、周りと調和していない建築物・・・ 全九章のうち、一章から七章…