地方創生大全

地方創生大全

人口減少、高齢化により日本中の街が縮小している中で、小さくても少しずつ生き延びる事業をコツコツ進めてきた著者による「地方創生」の失敗する原因と成功する方法の紹介です。

 

紹介内容はものすごく当たり前で簡単なことです。

 

地方創生に大事なことは・・・

・どこでもやっていることではなく、他でやっていない自分たちの地域だけでできることに取り組むこと。

・事業のランニング費用が黒字になるようにすること。

・継続できるようにすること。

・地道な取り組みを小さく産んで少しずつ育てることに注力すること。

などなど・・・

 

色々書かれてはいますが、特に何度も書かれていることは、

 「行政は地方創生にカネを出すな」

ということです。その理由も、当たり前のことなんですけど、

・責任者が曖昧になる。

・資金計画がテキトーになる。

・軌道修正が遅くなる。

などなど・・・

 

今の行政組織の運営方法や、事業の作り方というものは、昭和の戦後に人口が増加して、GDPも伸びる一方だった時代に形成されたものです。

 

例えば補助金

伸びそうな職種や企業の成長の加速度を増やすのに使われます。

 

全体のパイ(人口とかGDPとか)が増えているときは、鉄鋼でも自動車でも半導体でも、量産効果で儲かることが多いので、その業界(と、その周辺)に再配分しておけば、まあまあ当たりますし、失敗しても他が伸びてるから隠れます。

 

全体のパイが減っているときは、何が当たるのか誰もわかりません。

 

そんな中で外れにくいのは地道な改善です。

リターンも少ないですが。

 

本書で言っているのは、この地道な改善です。

 

別に華やかでもないし、目立つこともありませんが、地に足ついた改善は日本人に合う気がします。

ゆるキャラなんてやってないで

 

 

地方創生大全

地方創生大全

 

 

日本経済入門(野口悠紀夫)

日本経済入門 (講談社現代新書)

 

書名のとおり、いくつかの経済指標を用いながら日本の代表的な問題点を挙げている本です。

 

以下、目次からいくつか抜粋。

・ 経済活動をどんな指標でとらえるか(GDP

・製造業の縮小は不可避

・物価の下落は望ましい(&円安は日本の労働者を貧しくする)

・(高齢化に伴う)深刻な労働力不足

・膨張を続ける医療・介護費

公的年金が維持不可能

 

目新しい内容はありませんが、どれも基本的で根本的なものなので、再確認する価値はあります。

 

個人的には、製造業の縮小が不可避、という点については、ワタクシがかつて自動車メーカーの新車開発や生産部門に所属していたため、肌感覚としても強く同意するところです。

 

日本における製造業は、高度成長期に同時に成長、拡大したこともあり、

例えば「ものづくり」という単語は、実態以上の妙な物語を含んだ意味を持っています。

 

ただ、製造業が成長した実態というのは、

 高度成長期に日本の人口と需要が増え、

 また同時に人件費が安かった

ことが大きな要因であって、発展途上期に製造業が成長するのは、中国や東南アジアを見ればわかるとおり、日本に特有の話ではありません。

 

なのに、無理に「ものづくり」という物語に固執すると、生産部門においては人件費の安い国との原価低減勝負(しかも人件費でハンデ有)に巻き込まれてリソースを浪費してしまいます。

 

百歩譲って、日本人なものづくりが得意だとしても、コツコツ決められた生産を規格通りに大量に行うことというよりも、自動車の設計・開発のような

「限られたスペースの中で、多くの担当者が利害をすり合わせながら最適解を出す」

というムラ社会的組織内の調整能力だと思います。

 

 例えば、自動車の開発中に

「ヘッドランプを締めているネジの位置を1mm外側にずらす」

とするだけでも、

デザイン部門、ヘッドランプ設計部門、ボディ骨格の設計部門、実験部門、ボディの生産部門、組立の生産部門

たちが利害調整をしないといけません。

 

自動車の開発においては、

 それぞれの部署の持つ機能が

 他部署の影響を受けないように

 機能を極力独立させる

という水平分業化がどうにも困難なようで、新車の開発中には各担当者が調整作業にものすごい工数を割いていました。

 

欧米の開発者たちも、もちろん利害調整作業(事前打ち合わせ、すり合わせなど)は行うのですが、調整の質と頻度においては、日本人の比ではありません。

 

 

ただ、このムラ社会的調整能力は、本書の第11章で提言されているような「新しい技術で生産性を高める」ことに寄与するかというと疑問です。

 

google, apple, facebook, amazonが提供するサービスは利害調整の結果出てきたものではないと思うからです。

 

 

日本経済入門 (講談社現代新書)

日本経済入門 (講談社現代新書)

 

 

 

スタンフォード式最高の睡眠

スタンフォード式 最高の睡眠

「生活の質を向上させたい」と思ったら、睡眠の質を上げることが効率的かつ汎用性が高い方法です。当たり前ですけど、人生の約3分の1は寝ているので。

 

ということで、この本は、

 「睡眠の質を上げるにはどうしたらいいか?」

について、世界中の研究に基づいた回答を与えてくれます。

 

とにかく本書で繰り返し指摘されていることは

「睡眠の質は、眠り始めの90分で決まる」ということです。

 

「最初の90分間のノンレム睡眠は、睡眠全体のなかでももっとも深い眠りである。・・・「最初のノンレム睡眠」をいかに深くするかが重要」

 

 「大量のアルコールは睡眠の質を下げるが、(すぐに眠れるなら)度数が強くても量が少なければその心配はない」

 

「最初の眠気のタイミングを絶対に逃してはいけない。眠くなったらとにかく寝てしまわないと、その後、深い眠りは訪れず、いくら長く寝てもいい睡眠にはならない」

 

「健康な人の場合、目を閉じてから10分未満で入眠する」

 

というように、素早く眠りに就くことが、最初の90分間の質を上げるために重要だそうです。では、最初の90分間の質を上げる方策(素早く眠りに就く方策)は?というと、

「毎日同じ時間に寝て、同じ時間に起きる(就寝時刻、起床時刻を固定する)」

 

「体温と脳が重要」

 

体温:「入眠時に意図的に皮膚温度を上げて、深部体温(身体の内部の体温)を下げる。・・・そのために、寝る90分前に入浴をすませておけば、その後さらに深部体温が下がっていき、皮膚温度との差も縮まり、スムーズに入眠できる。」

 

脳:「眠りにつく前の脳はチャレンジを好まない。単調な状態(脳にとって退屈な状態)にすることは、眠るための脳のスイッチである・・・いつもどおりのベッドで、いつもどおりの時間に、いつもどおりのパジャマを着て、いつもどおりの照明と室温で寝る。入眠前に音楽を聴くならいつもも同じ単調な曲。スマホは危険(刺激的)」

だそうです。

 

また、睡眠時間を削る場合は、就寝時刻を変えずに起きる時間のほうを変えるほうがいいそうです。例えば就寝時刻は変えずに、90~110分間後に起きて仕事する、とか。

 

 

そういえば、世の中では様々な睡眠計が販売されています。

測定項目としては、睡眠時間、寝がえり回数、心拍数が主です。

 

何はともあれ、まずは現状把握(測定)から。

買ってみようかな。

 

スタンフォード式 最高の睡眠

スタンフォード式 最高の睡眠

 

 

「司馬遼太郎」で学ぶ日本史

 

「司馬?太郎」で学ぶ日本史 NHK出版新書


本書は、司馬遼太郎の主な著作を解説しながら、戦国時代以降の歴史を紹介するという本です。

 

司馬遼太郎の著作を通して歴史を紹介しているので、単純な歴史紹介ではなく、「司馬遼太郎がどんなふうにそれぞれの歴史を見て、どのように登場人物をそれぞれの小説の中で役割を割り振っていたのか」の解説本といったほうが正しいかも。

 

司馬遼太郎を読んだことがない人には面白くないかもしれませんが、司馬遼太郎を好きな人には、著者と一緒に、司馬遼太郎をさらに好きになれるはずです。

 

本書で紹介されている司馬遼太郎の著作は、主に以下です。

国盗り物語(信長、光秀、秀吉、家康の違いにについて)

花神(大村益二郎の合理性について)

・明治という国家(そのときの「国民」のリアリティについて)

・昭和という国家(酔っちゃう日本人について)

・二十一世紀に生きる君たちへ

 

これらを読んだことがあるなら、おさらいと解説として、本書を読むと面白いはずです。

 

 

「司馬?太郎」で学ぶ日本史 NHK出版新書

「司馬?太郎」で学ぶ日本史 NHK出版新書

 

 

歴史に「何を」学ぶのか

歴史に「何を」学ぶのか (ちくまプリマー新書)

半藤一利による若者向けの近現代史入門書(+半分自伝)です。

 

内容については、著者のこれまでの著作の内容を改めて平易に紹介しているだけなので、「昭和史」や「日本のいちばん長い日」を読んだ人には、特に改めて読む価値はありません。

 

とは言っても、飛行機や電車などのちょっとした移動等のとき、1~2時間で読めるので時間つぶしにはおすすめです。

(もちろん、近現代史に興味を持ち始めたときの入門書としてもおすすめです。)

 

本書のいいところは、

・(おそらく)口述筆記のため、文章が平易で読みやすい。

・著者が好む歴史上の人物やエピソードの紹介のときは、熱が入っていてひきこまれる

ですかね。

読後はきっと、著者同様に、鈴木貫太郎勝海舟、あと今上天皇が好きになります。

 

あ、でも一番よかったところは、冒頭の文章ですね。

「はじめに言っておきますが、大学教授を志すならともかく、歴史を学んだところでたいして役にはたちません。みなさんが大人になって社会人となったとき、歴史にくわしくても、それゆえに偉くなれるとか、儲かるとか、そんなことは、おそらくないと思います。しかしながら同時にこれは言っておきたい。歴史というのはとてもおもしろいものなのです。

 

この「勉強って何の役にたつの?」って質問は、こどもがすぐに言っちゃうセリフですけど、「役に立つ」とか「金が儲かる」とかを動機として本を読んだり勉強したって、きっと面白くないし、美しい人間にはなれないと思います。

役に立つか、とか、儲かるか、ってのは目的じゃなくて手段ですからね。

 

でも最近は「役にたつか」より「面白いか」とか「美しいか」という価値観のほうが重要視されているような気がします。なんとなく。

 

 

財政のしくみがわかる本

財政のしくみがわかる本 (岩波ジュニア新書)

どんな職種においてもですが、特に公務員においては、必ずと言っていいほど

「この仕事ってやる意味あんのかな?」

という瞬間に直面します。

(前例踏襲主義の傾向が強いなどの理由による。なぜ強いかはまた別の機会に)

 

そんなときに本書は

 「そもそも政府とはね…」とか「そもそも税とはね…」

という行政の基本的な機能を教えてくれるため、

 

もし公務員の方が仕事をしている中で

 「この事業って続ける必要あるのかなぁ…」

のように悩んだときには、是非手に取って基本に立ち返ってみましょう。

 (ちなみに民間企業の場合だと「限られたリソース内で最大の利益を上げる(金で換算できることが多い)」という最適化問題を解くことが基本なため、考え方は行政の仕事(住民の福祉の向上)より簡単でわかりやすいです(仕事が簡単という訳ではない))

 

 

本書の基本的な考え方は「財政とは民主主義に基づくべし」というものです。財政の基本的な仕事である「お金の再分配」は、有権者の一票一票に基づいて(民主主義的に)なされるべきであって、購買力によって再分配されてはならないという考え方です(購買力による再分配=市場でされるべき)。

 

本書ではこの考え方に沿って、政府のもともとの仕事(原始的な政府の仕事)から、現代の第三セクターまでの財政の仕事を紹介してくれます。 

 

①まず、政府のもともとの仕事は「所有権の設定(暴力の行使=警察、防衛)」です。とにかく「住んでいる人たちの自由を保障」してあげないことには、まともな国ではありません。自由を保障する仕事には消防も入れていいでしょう。

北斗の拳のような世界では、国が暴力を独占できていないので破綻国家と呼ばれます。ソマリアとか。)

 

②次に市場経済が発展すると、多くの人々が市場に働きにいきます。その時に家庭や家庭同士のコミュニティで行っていた仕事を政府が担うことになります。代表的なものは教育です。家単位でこどもに勉強を教えていては、家庭から市場へ働きに行くことができません。市場経済が発展すると、こどもを昼間預けておいてまとめて教育してもらう機能が求められます。また市場経済が発展すると、いざ働けなくなったとき、例えば病気になったり、老齢になったりしたときのセーフティーネットも必要になります。保育や介護もここです。

 

③その次は、市場経済が上手にうごくための条件整備が必要になります。道路や河川、港湾の整備、エネルギーや通信、交通などがあたります(これらは民営化してきてますけど)。つぶれそうな企業をソフトランディングさせるための補助金もここでいいでしょう。

 

④最後に三セクとか。利益を求めちゃうやつ。

 

このように、政府のもともとの役割から時代を経るにつれて行政サービスが拡大していく様子を学ぶことができます。

また上記以外にも、「予算のいろんな原則」とか「税って何?」とかも書いています。

 

本書の面白いところは、このような基本的な財政のしくみやあり方を紹介したうえで、第7章の終わりと第8章において「地方自治体はもっと上記②の家庭内サービスのお手伝いをしなさい!」と言っているところです。

ざっくりと紹介すると(勝手な追記箇所あり)以下のとおり。

 

    現代は皆、男女問わず仕事に行く必要がある

 → しかし地方自治体が上記②(介護とか子育てとか)の家庭内サービスを肩代わりしていない※

 → なので、働く人が介護や子育てでつまづくと非正規になるしかない

 → 単身でいることが有利

 → 少子化になる

 → GDP減る 

※これまで日本は中央集権国家だったので、地方自治体も、国が主導する③産業政策をこれまで惰性&つられてずっと横並びでやってきました(産業政策って反対する人が少ないので、国のような大きな単位だと、事業が産業政策ばかりになる)。本書では、地方自治体は「各自治体の特性に合わせて③産業政策じゃなくて②介護福祉をやろうよ!」と言っています。

 

 

ただ、行政がいくら子育てを手伝ってくれたとしても、そもそも仕事がないところには若者は来てくれないため、双方のバランスが必要になります。当たり前ですけど。

このバランスの取り方を研究している論文があったら読みたいです。

 

財政のしくみがわかる本 (岩波ジュニア新書)

財政のしくみがわかる本 (岩波ジュニア新書)

 

 

The New Odyssey(シリア難民)

シリア難民 人類に突きつけられた21世紀最悪の難問

2011年チュニジアから始まった「アラブの春」は、ずっと変わらないと思われていたアフリカの独裁体制を有する国々(エジプトとかリビアとか)の体制を壊しました。

独裁体制の中で、体制を転覆させるほどの大規模デモが起きた背景には、当時加速度的に広まっていったスマートフォンSNSの力が大きいと言われていました。

 

当時は、スマートフォンSNSが急拡大していた時期で、

・新しいテクノロジーによって

・それまで抑圧されていた人々はインターネットを通じて、

・各々「自由な意見」を表現、共有できるようになり

・結果的に国家体制まで変えられる

という、自由と民主主義を信奉する立場から見ると、アラブの春は素敵な物語に見えていたものです(アラブの春当初は)。

 

でも、何十年も続いた社会がそんなにすぐに変わるはずもなく、むしろ各国は混乱してしまったのが実際です。

 

 

このアラブの春で最も混乱し、内戦により50万人近くも死者を出しているのがシリアです。本書において著者が取材したシリア人のハーシム(37歳公務員 妻と子ども3人)の境遇は、シリアの一市民の様子をリアリティをもって伝えてくれます。

 

私も当時

「よくあんなボートに乗って地中海を渡ろうという気になるな」

とニュースを見ながら思っていましたが、本書の第1章を読むだけで祖国を逃げ出したくなる理由がよくわかります。

 

以下、ハーシムの場合(ちなみにハーシムは反体制派でもないただの公務員です)。

・ハーシムが家にいたらいきなり連行され、空港の地下牢に数百人とともに押し込められる。

・そこでは毎日4~5人ずつ拷問室に連れていかれる。ハーシムは手首を縛られ、12時間吊るされる。

・数か月後、釈放されるも内戦悪化に伴い、自宅は破壊される。

・シリアに行き場がないと判断しパスポートを申請したところまた逮捕される。監禁されて殴られる。

 

やっと運よく(かなり運よく)パスポートを入手できるも、その後シリアを出るだけでも大変な困難が待ち構えています。シリアを脱出しエジプトについたのちも迫害され、結局、地中海を超えヨーロッパ(スウェーデン)を目指すことになります。ヨーロッパについてからも多くの困難に直面します。本当にオデュッセイアのようです。

ただし、オデュッセイアと違う点は、ハーシムは今、現在、私たちと同じ時代に生きている人物であり、本書の内容は同時代に起きているということです。

 

 

本書を読むと、いくら欧州側が難民の受け入れを拒否し、フェンスを作ろうとも、移動してくる側はそんなことで諦めたりしない、ということがよくわかります。火事が起きている家から逃げ出そうとしている人たちに対して、「家に戻ってください」と言っているようなものですから。

 

シリア難民 人類に突きつけられた21世紀最悪の難問

シリア難民 人類に突きつけられた21世紀最悪の難問